ショートショートアーカイブ

2005年12月14日

フラメンコフィギュアの王子様

フラメンコフィギュアスケートがブームの時代
幼稚園から大学まで一貫してフラメンコフィギュアのスパルタ教育が受けられる
学園都市を擁するフィギュア学校の中等部が舞台
生徒はみなローラーブレードを履いて学園内で生活している
主人公は同じリズムを続けて踊れない女の子
先生のお手本を繰り返しているうちに彼女の靴は段々滅茶苦茶なリズムを奏ではじめる
失笑する友人たち、そこに学園のプリンスの少年が通りかかる
先生が「彼女にお手本を見せてあげてよ」と声をかける
軽やかなリズムを奏でる彼の靴、ワンフレーズ遅れて同じリズムを刻むヒロインの靴
はじめは簡単なリズムを交互に刻むだけだったがピッタリついてくる少女に驚いて
プロレベルのリズムを繰り出す少年、しかしそれに呼応する少女の靴
タップダンスのようにカカカと音を響かせながらすいすいと後ろ向きに滑るように踊りだす
二人は心地よいリズムを刻みながらホールをくるくると踊りまわる
実は彼女はリズムを覚えられないだけで
直前に聞いたリズムを再現することには天才的な才能を持っていたのだ
いつの間にか人だかりが出来てダンスを終えた二人を歓声が包む
「決めた!お前をパートナーにする!」少年が彼女の手を取った
少年はコンクールのパートナーを探していたのだ

果たして少女の運命はいかに


という内容の夢を見た、寝る

2004年12月 9日

あるスレからの引用

懐かしいものを見つけたので引用
ディスクフルで半年分のICQのログを飛ばした記念に過去のICQログから


私は一人の少女と共に暮らしている。
少女の名は木之本さくら。
少女は心を病み、自らの世界に閉じこもったまま。
今日も部屋の片隅でひざを抱え、幸せな夢を見ている。
彼女は時折、夢の中の出来事を私に話してくれる。
少女が自分の見た夢について話す。よくある話だ。
違うといえば、少女に夢と現実の区別がついていないことだけ…。
そして私は今日も夢の話を聞き続ける。
私にできることはそれだけなのだから…。

シチューをのせたトレイを左手に持ち、ドアを軽くノックする。
「………」
中から返事が聞こえてくることはない。いつものことだ。
「さくらちゃん、入るよ」
しばらく待ってから、そっとドアを開ける。
部屋は薄暗く、静かだった。そこにパジャマを着た少女の姿が見えた。
少女は部屋の隅にあるベッドに腰掛けていた。
少し俯きがちになり、無表情のまま、床の一点を見つめている。

「ほら、今日のごはんはシチューだよ」
そう言って、トレイを差し出してみる。しかし反応はない。
私は溜め息をつくと、トレイを机の上に置いた。
部屋には机と箪笥、そしてベッドが置いてある。
これらは皆、この少女の為に用意されたものだ。
しかしベッド以外の物を少女が積極的に利用することはほとんどない。

「さくらちゃん…?」

少女の痩せた肩を軽く揺すりながら、優しく呼びかける。

「さあ、さくらちゃん。今日もお話を聞かせてもらえるかな…」

これはいつも行っている儀式。
この儀式を行わないと、彼女はこちらの世界に帰ってこない。

「今日は何のカードについて話してくれるのかな…?」

「カード…」

カードという言葉に反応し、少女の表情に徐々に変化が現れる。

私は少女の目の前にしゃがみ込み、少女の瞳をのぞき込む。
私が目の前にいるのにも関わらず、その視線が私に合わさる様子はない。

「そう、また魔法のカードのお話を聞かせてくれないかな」

少女がようやく私を認識し、嬉しそうに微笑む。

「うん、いいよ…。えっとね、今日はね…」

それは偉大なる魔法使いが作りだしたという不思議なカードを、一人の少女が一生懸命集めるという物語。
それは一人の少女が作り出した空想の物語。
少女は物語の中では偉大なる魔法使いの血を引く者であり、封印の獣と共にカードを集め続ける運命にある。

少女は仲の良い友達に囲まれ、優しい家族と共に暮らし、そしてほのかな恋をしている…。
皆が明るく、前向きに、そして幸せに生きている。
そこは決してネガティブな感情が生まれることのない、優しく暖かな世界。
それが少女の望んだ世界だった。
そこにいる限り、少女は幸せでいることができる。
そこにいる限り、少女は過酷な現実を直視せずに済むことができる。

「そしたらケロちゃんがね…」

シチューをゆっくりと食べながら、少女は自ら作り上げた世界について嬉しそうに語り続ける。
私はそんな少女の笑顔にどうしようもない痛々しさを感じながらも、少女の語る架空の物語に耳を傾けていた…。