かりそめの楽園
「いつもこんな事してんの?」
夕姫がトロ子を抱いたまま尋ねる
「は…い…」
夕姫の胸に顔を埋めたままトロ子が答える
その息は熱っぽく夕姫の胸元に吐きかけられている
それは些細な悪戯から始まった
夕姫がハンカチの話を切りだしたのは放課後の事だった
「で、どういう風に使ってるのかみせてくれない?」
トロ子が自分をどう思っているのかは知っていた
だから多少の悪戯なら平気だろうと夕姫は考えた
初めはただ、からかっていただけなのかもしれない
だがその一方でどこかで気づいてしまっていた
自分がその行為に興奮していることに
「でないと嫌いになるわよ…それでもいいの?」
夕姫が詰め寄る、誰もいない教室
夕姫は言った、嫌われたくなければ、してみせろと
「…本当に嫌いにならないで…くれますか?」
「ちゃんとしたら、考えてあげるわ」
トロ子は分かっていた、これは儀式なんだ
私が拒んでも夕姫は嫌ったりしないだろう
でも、と思い直す
私は夕姫に嫌われたくないから
だから言われたとおりにするんだ、と
それも、儀式なのだから
夕暮れの教室にあらわれた小さな舞台
背あわせにした二つの机がその役割を果たした
そこでトロ子は身をくの字に折って横たわっていた
夕姫がくれたハンカチをぎゅっと握ったまま
空いた手で太股の辺りを押さえて
二人きりの教室に切ない吐息を漏らす
夕姫は椅子に逆に座りその行為をただ観察していた
「へぇ…本当にしちゃうんだ…」
「だ、だって」
「普通はしないわよねぇ…変態よね」
そういいながら立ち上がるとそっと寄り添う
「いやらしい子」そう耳元で囁く
「でも好きよ、そういうの」
そう言うとそっと胸に抱き寄せて
優しく髪の毛を撫でた
「夕姫…さん…」
「嫌いになるなんて嘘、大丈夫よ」
「はい…」
夕陽が教室をゆるやかに照らし、二人を包む
寄り添う二人の影が長く伸びて教室の壁に映る
聞こえてくる夕姫の鼓動、やさしく撫でる手の感触
トロ子は嬉しかった、夕姫とこの儀式を共有できるのが
「きもちいい?」髪を撫でながら聞く
「はい…」
「いきそうになったら…ちゃんというのよ」
「はい…」
夕姫は優しかった、ただただ優しかった
そうして抱かれたままトロ子は自分を慰め続ける
そのうち小さな快感が襲いかかってきてトロ子は呟いた
「い…く…い、いっちゃいます…ぁ」
夕姫の胸に顔をうずめてトロ子は身体を硬直させる
途端
両肩を掴まれ強引にトロ子は引き剥がされた
「え?ひあ…ぁ…」
トロ子はそのまま達してしまっていた
何度か身体を痙攣させる
夕姫はそんなトロ子をじっと見つめて意地悪そうな笑みを浮かべた
トロ子は目が涙でにじんできたのを感じて俯いて歯を食いしばった
ひどく悔しくて泣くのを堪えようと思ったが喉からは小さく嗚咽を漏れていた
夕姫は両の手でトロ子の頬を掴むと無理矢理顔を上げさせる
トロ子は達した余韻で上気した頬をくしゃくしゃに濡らしていた
「その顔見せていいのは私だけだからね、私以外の誰かに
そんな顔見せたら承知しないんだからね」
そう捲したてると夕姫はくちびるを重ねる
くちびる、頬、首筋とキスをしながら
ブラウスのボタンを強引に外していく
「や…服破けちゃう…」身をよじるトロ子
かまわず腕を取り押し倒し首筋をきつく吸う
「ひぁ!!だ、だめ、ぁ!!」
制服の隙間から強引に胸を揉む
スカートの中をまさぐりながら夕姫は耳を唇ではむ
熱い息が耳をくすぐり夕姫が息を荒らげているのが分かる
二人の呼吸だけが辺りに響く
夕姫が自分を犯して興奮しているのだと思うとトロ子は興奮した
内股に暖かくつぅっと液が垂れていく
「すごいじゃない、垂れてきてる」
夕姫が顔を紅潮させたままその部分を指でなぞる
ゆっくり、ゆっくりと夕姫の指が股を撫であげる
つつ、つつ、と指が動くそのたびに内股から全身にぞく、ぞくと快感が走る
「ふふ」
夕姫が顔を寄せる、初めて間近に見る夕姫の顔
そして指が中に入ってくる感触
初めての違和感に身をすぼめる、何度も唇を重ねる
夕姫の美しい顔が紅潮し。凄くいやらしい顔をしていた
それがトロ子に痛みよりも強く興奮させて
そしてまた快感が押し寄せる
「いきそう…なのね?」夕姫は言う
小さくうなずく
「どうして欲しい?」
「そばに…意地悪しないで…」
夕姫は優しい笑みを浮かべると抱き寄せそっとキスをした
そのままトロ子は夕姫にぎゅっとしがみつくと
二三度体を反らして快感に身を委ねた
トロ子は泣いていた
乱れた衣服を手で押さえて、ぽたぽたと涙を流していた
夕姫は唇で涙を吸い取ると頭を抱き寄せた
「…嫌いになった?私を」
夕姫が尋ねた
トロ子はぎゅっと夕姫を抱き寄せる
「嫌いだったら…こんな気持ちにはならないです」