*20話おわりにて
「で、これで何してたわけ?」
夕姫はハンカチをひらひらと振りながら小馬鹿にしたような口調でトロ子に言った
「え・・・」
「え、じゃないわよ。私のだと思ったこのハンカチで何したかって聞いてるの」
うつむくトロ子
「言えないような事な訳?」
「ち、ちが…」
「何が違うの?」
知っているのだ、何をしたかなんて聞くまでもなく
「してあげても、いいのよ」
夕姫は妖しく囁くとそっとトロ子に寄り添う
「私がしてあげてもいいのよ」
もう一度囁く
トロ子は耳まで赤くして顔を伏せたままふるえている
小さく息を吸って、意を決したように息を止めるが。また、小さく吐く
「…ぃ」
「どうしたの?もう一度言ってごらんなさい」
夕姫が急かす
「して、ほしいのね」
「は…はい」
「ふふ、じゃぁ」
夕姫はトロ子の頬に手のひらでやさしく包むとそっと頬を寄せる
「目を、つむって…」
夕姫のくちびるが近づく
トロ子もゆっくり、ゆっくり目を閉じる
そして

「ば〜ん」
バチン
「ひぁう!!」
夕姫のデコピンがトロ子の額を打ち付けた
「ふん、だからトロ子だってのよ」
夕姫が意地悪そうにそっぽを向く
「う…あ…」
「馬鹿じゃないの?」
「ひっく、ひっく」
「ふん」
夕姫はポケットからハンカチを取り出すと
「ほら」
トロ子に手渡す
「今度は私のなんだから、大事に使いなさいよ」
そういうと背を向けてしまった

トロ子は知っていた、夕姫は意地悪だけど、優しい
「えへへ」
「もう、気味悪いから泣きながら笑わないでよ」
「はいっ!…えへへ」
「で、結局何に使ってたわけ?」
「なにがですか〜」
ジョエルがひょっこりと顔を出す
「ばかっ!!あんたは関係ないの!!」
「ヒドイですよ夕姫さ〜ん、なにが関係ないんですか〜」
いつものように夕姫がジョエルを追いかけ回す
トロ子はハンカチをぎゅっと握りしめると
夕姫のそんな姿を見つめていた